目次
はじめに
長崎市の南端、野母崎半島のさらに先に浮かぶ小さな島・樺島(かばしま)。その高台に広がる樺島灯台公園は、白亜の灯台と海、そして春に咲き誇る桜のコントラストが美しい景勝地です。
海沿いの坂道から見上げるその景色は、桜の時期になると多くの花見客が訪れ、笑い声やカメラのシャッター音が絶えません。
けれども、そんな華やかな季節が過ぎると、この場所は一変します。秋冬の訪れとともに人影はまばらになり、冷たく澄んだ潮風と波の音だけが耳に届く──静寂の時間が流れはじめます。
夕刻、五島灘の水平線がゆっくりと黄金色に染まり、やがて深紅へと変わっていく。観光客で混み合う春とは異なる、穏やかで大人びた灯台の表情がそこにあります。
樺島灯台は、昭和初期に「野母崎灯台」として建てられて以来、今もなお海を照らし続ける白亜の灯台です。
その足元には五島灘を望む雄大な景観が広がり、訪れる者を魅了します。
特に秋冬の夕暮れ時は、静寂の中で海と空がゆっくりと色づき、贅沢な時間が流れます。
今回は、そんな「秋冬にこそ訪れたい樺島灯台公園」の魅力をご紹介します。
樺島灯台公園のみどころ
昭和初期から海を照らす白亜の灯台

樺島灯台
樺島灯台は1932年(昭和7年)に「野母崎灯台」として建てられた歴史ある白亜の灯台です。以来、90年以上にわたり、変わりゆく海の景色と共に刻まれた時間を照らし続けています。丸みを帯びた円形の塔体は、コンクリート造りながらも当時の建築様式の美しさと堅牢さが感じられ、地元の人々だけでなく灯台愛好家からも高く評価されています。
この灯台は単に航路を示す航行標識としての役割を果たすだけでなく、その優雅なフォルムが五島灘の荒波を背景にしっかりと存在感を放っています。戦前から戦中戦後の激動の時代も耐え抜き、今なお灯りを灯し続けるという事実は、訪れる者に強い歴史的重みと安心感を与えてくれます。
また、灯台のすぐ近くには当時の建築意匠を感じられる細部も残されており、例えばバルコニーの手すりや換気口の丸穴など、機能美と装飾美が融合したデザインも見どころの一つです。こうした歴史的建築物としての価値が、灯台の景観と一体となって樺島灯台公園の魅力を形作っています。
ただの灯りではなく、まるで時代を語りかける存在である樺島灯台。その足元から見上げてみると、ここがただの観光地ではなく、地元の人々や海を行き交う船の安全を長く支えてきた誇り高い場所であることを感じられるでしょう。静かな海風に吹かれながらその白亜の灯台を間近に眺める体験は、時間の流れを超えた感慨深さを味わわせてくれます。
このように、樺島灯台はその歴史の深さと今も現役で海を照らす機能性、美しい姿で訪れるすべての人を魅了する灯台です。秋冬の静かな季節に訪れると、その存在感は一層際立ち、五島灘の壮大な自然と溶け合う瞬間を堪能できます。
五島灘を一望できる絶景ロケーション
五島灘の壮大な海を眼前に望む樺島灯台公園は、その立地自体が最大の魅力です。青く広がる水平線、風に揺れる波、そして遠くに浮かぶ島々の風景が織りなす自然美は、訪れる者に深い感動をもたらします。
灯台の周辺には遊歩道が整備されており、海岸線の起伏を感じながらゆったり散策できるのも特長です。特に晴れた日には、空と海の境界が溶け合い、まるで世界が果てしなく続いているかのような広がりを実感できます。潮風が肌を撫でる中、聞こえてくる波の音は心を落ち着かせ、日常の喧騒から離れてゆったりとした時を過ごせます。
五島灘は日本海と東シナ海の境界に位置し、多様な海洋生物や漁業の恵みを育む場所でもあります。灯台からの視線の先には、漁船が行き交う様子も見られ、海の息吹が感じられます。加えて、季節によってはカモメやウミネコが舞い、市街地では味わえない野生の自然の営みを観察することも可能です。
夕方になると、水平線に沈む夕日が空と海をオレンジや紅色に染め上げ、まさに絶景の瞬間が訪れます。訪問者はベンチや芝生に座りながら、その美しい景色に心を奪われ、ゆっくりと変わりゆく光の演出を楽しみます。写真好きにとってはまさに絶好のシャッターチャンスであり、ぬくもりある夕景はSNS映えも抜群です。
こうした豊かな自然環境と海の絶景は、五島灘という地域の歴史や文化とも深く結びついています。古来から海の恵みに支えられてきた土地柄は、灯台の存在と共に訪れる者に海と人々の営みを感じさせ、五島灘がいかに人々の生活と心の拠り所であるかを伝えています。
秋冬に訪れる静寂と特別な夕暮れ
秋から冬にかけての季節、樺島灯台公園は一層の静けさを纏い、日が沈む瞬間を迎えると特別な夕暮れが訪れます。澄んだ冷たい空気に包まれる中で、沈みゆく太陽が五島灘の水平線にじんわりと溶け込み、赤や橙、紫の深いグラデーションが空と海を優しく染め上げます。
この時間帯、灯台公園内には多目的広場をはじめ夜間照明が設置されており、暗くなっても安全に過ごせる環境が整っています。ただし、灯台周辺の遊歩道の明るさの詳細は限られますので、訪れる際は念のため懐中電灯などの準備もおすすめです。
また、冬の海風は冷たく体感温度はかなり低くなります。特に海に近いため風が直接当たり、十分な防寒対策をして訪れることが快適な滞在には欠かせません。
夕暮れ時は訪問者も少なくなり、灯台の灯りがほのかに点る頃、まるで時間がゆっくりと止まったような感覚を味わえます。波のさざめきと鳥の鳴き声だけが静かな音楽となり、自然と一体になれる特別なひとときです。
訪れる人は芝生やベンチで沈む夕日を眺めながら、静寂の中にある力強さや移ろいの美を感じ、心を癒していきます。
五島灘の広大な海と秋冬の静けさが織り成す夕暮れは、単なる自然の光景を超え、その土地が持つ悠久の歴史と人々の営みの深みを映し出します。灯台と共にあるこの夕刻は、訪れる誰もにとって特別な思い出として刻まれるでしょう。
樺島灯台公園の動画
樺島灯台公園の基本情報
利用案内
営業時間
24時間
※灯台内部には通常立ち入れません。
休業日
なし(年中無休)
料金
無料
問い合わせ先
長崎市南総合事務所 野母崎地域センター
TEL:095-893-1111
参考リンク
アクセス
公共交通機関
路線バス
長崎駅前または長崎新地ターミナルから長崎バス「樺島行き」に乗車、終点「樺島」下車(約90分)、そこから徒歩約20分で公園入口へ。
※本数が少ないため、事前に時刻表の確認をおすすめします。
車
長崎市中心部から国道499号線を南下し、野母崎方面へ。
樺島大橋を渡って約1時間30分で到着します。
カーナビの場合は「樺島灯台公園」または「樺島大橋」で検索すると便利です。
駐車場
無料駐車場あり。公園入口付近に数台分のスペースのほか、樺島大橋たもとにも駐車可能エリアがあります。